ja 「あーぁ・・・ 風邪ひいちまったな 熱あんだろ?」
さ 「・・・・・・・。」
ja 「ライヴ・・いくんだろ どうせ それに対してはなんもいわねーからさ・・・
ただし、俺が行き帰り途中も一緒だかんな」
珍しく熱を出したさちこだが、今日はステージのある日
穴をあけるわけにはいかない
ja 「もうそろそろ用意しねーと遅れっぞ 今日の衣装はどれだ?」
さ 「ん・・・あれ」
ja 「これか?OK」
荷物を片手に抱え、片手でさちこを抱きか掛けるように駐車場まで降りていくと
助手席のシートを少し倒しそこにさちこを乗せて静かに車を走らす
ぐったりとシートに身を預けるさちこは目を閉じてるが、眠ってはいない
30分程してライブハウス『EAST』に到着
ここ『EAST』でさちこが vo.を務めるバンド『MOVE』は週1回 ライヴを行なっている
『EAST』では月に一度オーディションを行い、オーナー「シゲさん」の
お眼鏡にかなったバンドが 週1の枠がもらえるのだ。
客足の伸びないバンドはいやおうなく降ろされる
車を駐車場に停め、助手席のさちこに
ja 「こっち向いてみろ」
身体を起こし 素直に目をむける
ja 「よし その顔でいけよ いくら風邪ひいてるとは言え ダウンしてたってステージに
上げる以上、分かってるよな? じゃ行くぞ」
裏口から中に入ると 中から音がもれている
その音のほうへ進んでいくと メンバーはもうお揃いだ
その中の一人がこちらに気づいて近づいてくる
『MOVE』のリーダーでGuitarの健二だ
健 「お、珍しーじゃん 今日はお供つきですか (笑)」
さちこのうしろにいるjaに 健二が目線を合わせる
jaは健二の目を見たまま 首を縦にふり、合図を送る
健 「じゃ姫はあっちで音合わせしといでよ」
さ 「ん (笑)」
さちこが去ったその場は jaと健二ふたりになった
健 「なに?」
ja 「俺さ、ここのことには関わらないけど・・・アンタのこと信用してっからさ
今日あいつのこと頼むわ そんだけ・・・じゃ俺あっちで見てるよ」
健 「姫 どーかしたか?」
ja 「見てりゃすぐわかるよ じゃ頼んだぜ」
それだけ言うと荷物を楽屋に置き、店の方へ移動する
健二は皆のところに戻り、マイクに向かうさちこの様子を伺っている
足元がいつもと違う 動きもどことなく鈍い
(ははーん・・これか )
健二がBassの周にそっと耳打ちする
健 「姫 今日体調よくないらしいな バックいつも以上に支えてやんねーと・・・いいな?」
周 「あ・・・んとだ」
さ 「ちょっとーーー 仲良しこよしはいいけどさ 音出して欲しいんですけどぉ」
周 「あ、わりーわりー」
そのころカウンターでは店員ジョニーとja
ジョ 「今日は早いんだな」
ja 「さちこが体調よくないんでね・・・ 付き添い」
ジョ 「そっか・・・大変だなぁ 彼氏としては家で寝かせときたいんじゃないの?」
ja 「いや・・・風邪ひいてたって何だって楽しそうな顔はするだろ?
向側で楽しんでる顔あいつだってみたいだろ・・・それが例え 24時間ライブーとかでも
ぶっ倒れるまでやってこいって言うな、俺は。ステージの中央 それはあいつの場所
だからさ、それを取り上げる権利俺にはないね そういうさちこを見守ることが
俺の権利。そのあとはさ俺がなんとかするよ (笑)」
ジョ 「んと 惚れてんだねぇ 姫にさーーー」
ja 「まぁねぇ」
いつもどおり始まるライブ
健二を周に助けられながら、誰もさちこの異変に気づかず今夜もまた大盛況のまま
一夜が終わる
健二の判断で今日のアンコールは取りやめになった
ライブ終了後 さちこを先頭に健二、周、ドラムの学と続いてステージから降りてくるメンバーを
jaが通路で出迎える
さちこの目の前に立ちはだかると皆びっくりしてたち止まる
そのまま真面目な顔して肩膝をつく
ja 「さ、姫・・魔法が解けない内に家路へと急ぎましょう。」
口を半開きのまま固まるメンバーをよそに さちこを抱き上げると出口へ進む
振り向いて健二に
「ありがとな」と一言残しライブハウスを後にする